記憶

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――華やかな祝祭の傍らで、小さな溜息を漏らす者が居た。

この娘が産まれて六年が経つ。
それは私がこの娘と出会い、側に仕えていた時間とほぼ同じである。


一国の姫の生誕。
民衆は、この地では貴重である生花を惜しげもなく地面に散蒔き、皇に掲げられた人形の様な小さな赤ん坊に、大袈裟なまでの歓声を上げ賞賛を送る。

嘆息の主は、私自身だった。

心の奥底に渦を巻く得体の知れない感情が、無意識の内に溜息となり宙を舞う。
同じ人間であるにも拘らず、一つの生命の誕生を喜べない理由が、私にはあった。
それは失われた記憶の中に潜む悪夢――

しかしながらそれが鮮明になる事は無く、苛立たしさともどかしさだけが募り、過去の記憶を探れば探る程に吐き気と酷い頭痛が心身を蝕んでゆく。

断片的なものでも構わない。
世界中の術師の集うこの地を訪れれば、成すべき事実、求める答えが見つかるかも知れない……
今はただ、それだけの理由でここにいる。

姫の生誕など、正直なところどうでも良かった。


***


おわり。

続きをちょこっと書いてみたんですが、やっぱりこれ以上ネタバレするとやばいだろと言う事で、もう少し本編が進んでからにします…決して挫折じゃないよ!!←